Takuji Narumi

WORKS

  • Augmented Satiety -拡張満腹感-


現代社会において,肥満は世界的な社会問題となっている.肥満の解消には,食生活を見直し,食事量を適切にコントロールすることが求められる.一方で,人間が自らの努力によって食事量を適切にコントロールすることは容易ではない.この1つの理由は,摂取した食事の重量や栄養価を正確に把握するための仕組みが人体に備わっていないためである.その代わりに,胃や腸の膨満感や食事の見た目の量,その他の手がかりを統合することで総合的な「満腹感」を判断している.このとき,実際の食品の量だけが満腹感の判断の手がかりになるわけではない.
近年の心理学等における研究によって,食事をとる量は,食事の際の周辺の状況にも大きく左右されることが明らかになってきている.例えば皿やスプーンといった食器の大きさ,盛りつけの量,誰と食べるかといったような要素が,食事をとる量に間接的かつ無意識的に影響を与えることが知られている.そのような影響を利用し,拡張現実感を利用して食品の量を判断する上での手がかりを適切に操作することで,食事そのものを変化させずとも,その食事から得られる満腹感を変化させ,意識や努力を必要とすることなく食事摂取量のコントロールが可能になると考えられる.

  

これらを踏まえ,本研究では,拡張現実感によって満腹感の手がかりとなる要因を操作し,同量の食事から得られる満腹感を操作する「拡張満腹感」の実現を目指している.そうした手法のひとつの実装として,満腹感の手がかりのひとつである食品の見た目の量に着目し,リアルタイムに食品の見た目のサイズを変化させてフィードバックするシステムを開発した.このシステムでは,ユーザはカメラつきのHMDを装着する.カメラ画像から食品部分を抽出し,サイズを変更してHMDに表示するとともに,食品と手指の部分とのつなぎ目が不自然にならないよう,手指を自然に変形させル処理を行う.この合成された映像を見ながら食事をすることで,ユーザの食行動に影響を与えることができる.これまでに,実験によって,システムを使用して被験者の食事量を増減両方向に10%程度操作できることを確認している.