Concept - 目的

ユビキタスコンピューティングなどの研究の発展により、都市空間やパブリックスペースが知能化し、コンピュータの便益を得られる場所はもはやパソコンの前だけではなくなってきています。都市や公共空間といった場所では、従来とは違ったコンピュータと人間のインタラクションの方法が必要になります。そのような流れの中で、空間中を満たす要素をインタフェースとして用いれば、空間と人間、そして同じ空間にいる人々が自然にインタラクション出来るようになると考えました。

inter-glowでは、どのような空間にも照明があることに着目し、光をインタフェースとして利用することを提案しています。光源を人間が知覚出来ないほど高速に点滅させることで、光に情報を埋め込み、インタフェースとして利用します。日常で使う照明をそのまま安全に通信に使え、情報をやり取りすることが出来る場所がわかりやすいという特徴があるため、空間と人間がインタラクションをおこなうのに適した技術だといえます。

Structure - 構成

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本研究では、可視光通信技術により情報を埋め込んだ光を操作して、受光装置の埋め込まれた物体に光を当てることで人間と空間や同じ空間中にいる人間どうしがインタラクションを行うことが出来るシステムを提案します。これにより、光を操作することで人間が情報をわかりやすく操作できるシステムの実現を目指しています。複数人で同時に利用するなどの多様なインタラクションを実現するためには、情報が付加された光を複数同時に入力されても判別できる可視光通信技術が必要です。デジタル伝送の多重化に用いられる時分割多重化方式では、同時入力可能な光源の数を増やすほど光源が光っている時間が短くなり、光が暗くなるため照明としての機能が損なわれます。照明としての機能を損なわず通信を多重化するため、光源の点滅周波数をもとに通信を多重化する方式を開発しました。この提案システムの主な特長は以下の三つです。


Implementation - 実装

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提案システムの実装として、インスタレーション作品「inter-glow」を製作しました。作品はリビングのミニチュアになっており、発光部と受光部から構成されています。

発光部では、H8マイコンにより4つのLEDライトを、それぞれ120Hz、150Hz、200Hz、250Hzの4つの周波数で点滅させます。LEDには1Wの超高輝度白色LEDを用い、ある程度の照明や外光がある空間においても十分に使用できるよう設計しています。

受光部では、受光センサであるフォトダイオードに当たる光の強度をH8マイコンによりA/D変換します。それをPCに送り、サンプル数512でフーリエ変換した後、ノイズを取り除く処理を行います。これにより、受光センサに当たる光に含まれる点滅の周波数成分を解析し、体験者が入力しているLEDライトを判別します。この入力の組み合わせ(2の4乗=16 通り)に応じて、適切な音源を再生させるシステムです。

今回はコンテンツとして、入力された光の組み合わせに応じて4人家族の会話を再生するシステムを実装しました。このシステムでは光が人の存在を表しています。そして、人が集まり交わる場所であるリビングを模した空間の中で、体験者は光を操作しキャラクターの交流をさせ、キャラクター同士の関係性を探ります。蛍が光ってコミュニケーションをとるようにキャラクターが光でコミュニケーションを行わせることから、システムには「inter-glow」と名づけました。

一つの光を入力した場合は登場人物のモノローグが再生されます。また、光を重ね合わせ交わらせるという操作が、登場人物どうしに会話をさせるという意味を持ち、複数の光が入力された場合には入力された光に割り当てられた登場人物間の会話が再生されます。会話は16通りの入力の組み合わせに対しそれぞれ複数存在し、いくつかのストーリーが全40種類の会話に分けられています。4つのライトを一人の体験者が同時に操作することは難しいため、これらすべての会話を聞くには複数の体験者が協調作業する必要があります。


Papers - 論文