技術とコンテンツ / Technology and Contents

東京大学工学部 機械情報工学科

令和5年度(2023) 開講概要

映像, メディア , コンピュータ・グラフィックス・デザイン, 建築設計など, 理系文系を問わず技術とコンテンツの両方に何らかの関わりがある, さまざまな分野でご活躍の方々から , オムニバス形式でお話をうかがう.

講義は遠隔開催とし,Zoomでおこなう.講義に対する質問もZoomのチャットで受け付ける.参加用のZoomのアドレスはUTASを参照のこと.

Twitterでの公式ハッシュタグは#技術とコンテンツ(講師がSNS投稿にNGを出さない回については積極的な投稿を期待しています.)

評価方法

全13回の講義中, 8回以上出席した者を有資格者として, レポートで評価を行なう.レポートの締切,内容についてはオムニバス最終回にて告知する.

担当

日時・場所

日程・講師

第1回
4月 5日(水)
葛岡 英明
東京大学大学院情報理工学系研究科 教授
「技術とコンテンツ」
講義全体の概要,オンライン講義と出席登録の方法等,およびCSCWとコンテンツ研究について紹介する.
第2回
4月 19日(水)
池上 高志
東京大学大学院総合文化研究科 教授
「School for Poietic Computing」
ALIFE(人工生命)の研究を例として、未来の「計算」とはなにか、について議論。

略歴: 教授。理博(東京大学、物理学, 1989). 京大基研、神戸大を経て、1994年より東京大学広域システム科学系准教授。2007年より現職。専門は複雑系の科学、人工生命。 2018年、ALIFE国際会議を主催。 2020年 Conf. Complex Systems, 2019年 SWARM 国際会議 などでの基調講演多数。著書に、 動きが生命をつくる(青土社 2007), 人間と機械のあいだ(共著、講談社、2016)、作って動かすALIFE(共著、オライリージャパン, 2018)など。 また、アート活動として、Filmachine( with 渋谷慶一郎, YCAM 2006), MindTime Machine( YCAM, 2010) , Scary Beauty( with 渋谷慶一郎, 2018), 傀儡神楽(2020)、Alternative Machineとして SnowCrash(WhiteHouse 2021), VR ReverseDestiny Bridge(あいち2022) 、Shell of Time (ナハート 2022)、 View from Nowhere (駒場2, 2023) などを行っている。

第3回
4月 26日(水)
番匠 カンナ
idiomorph 主催 / バーチャル建築家
「バーチャル空間とその設計について」
TBA

略歴:

第4回
5月 10日(水)
東 智美
株式会社往来

武者 良太
ガジェットライター/ジャーナリスト
「TBA」
TBA

東智美 略歴:スマホ周辺機器メーカー「Cheero」へ立ち上げから参加し「ダンボーバッテリー」などのヒット商品を手がける。2021年3月にVRメタバースマーケティングを中心とする株式往来を作り『VRと仮想空間』を出版。主な事業内容はVRChatを活用した企業World構築やイベントプロデュース。
tomo@toomo.jp

武者良太 略歴:平成1年にライターとして活動開始。出版社勤務の後に再独立。インターネット、スマートフォンのトレンドを見ていくなか、ソーシャルVRで培われるコミュニケーションに注目。東洋経済オンライン、Yahoo!ニュースなどWEB媒体にメタバース記事を寄稿するとともに、株式会社往来の名で出版した『VRと仮想空間』『アバターワーク』に筆者として参加。
mmmryo@gmail.com

第5回
5月 17日(水)
古屋 晋一
ソニーコンピューターサイエンス研究所(SONY CSL) シニアリサーチャー/ エンボディドクリエイティビティ グループリーダー
「創造性の限界を突破するサーキュラーリサーチ」
AIの発展は,人間が容易に思い浮かばないアイデアを次々に生み出すことを可能にしています.このような新時代において,人間自らが創造する喜びが奪われてしまうことを危惧されるかもしれません.しかし,私たち人間は,自ら思い描いた創造性を「具現化する」ことによって,喜びや幸せを感じられる生き物です.自らの身体を使うことを通して,“できなかったことができるようになる喜び”や“イメージが形になる感動”を享受しています.したがって,アイデアが溢れる世界となっても,身体を使って創造性を具現化する行為こそが,人間の感動の源泉と言っても過言ではないでしょう.

とはいえ,身体と道具を巧みに使いこなし,創造性を具現化することは容易ではありません。この能動的な営みを充実させるためには,トレーニングや教育を通した創造者自身の成長と,ヒューマンセントリックなテクノロジーの発展の双方が不可欠です.こうした創造者とテクノロジーの共進化は,まだ見ぬ新たな感動体験を創出し,時間と空間を超えて拡がる中で,新しい文化や文明が創り出され,次世代へと紡がれていきます.こうした持続可能な感動の発展を可能にするためには,骨太のサイエンスに基づいたサステイナブルな学術や産業の基盤と,それを支え育む人同士が有機的に相乗効果を生み出せるコミュニティの形成が必要です.

本講義はその一例として,音楽家のための研究・開発・教育が循環しながら互いに相乗効果を生み出す「サーキュラーリサーチ」という我々の取り組みを紹介します.ロボット工学や情報科学,神経科学や心理学,身体運動学といった様々な分野が学際的に融合したサイエンスとテクノロジーを通して,音楽家を心身の限界から解放する術を生み出し,それをトレーニングや指導の現場に一気通貫に実装する教育プラットフォームについて,最新の知見についてお話します.

略歴:ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー兼エンボディドクリエイティビティグループリーダー,ハノーファー音楽演劇メディア大学 音楽生理学・音楽家医学研究所 客員教授,一般社団法人NeuroPiano代表理事,東京藝術大学,京都市立芸術大学・東京音楽大学 非常勤講師.大阪大学基礎工学部,人間科学研究科を経て,医学系研究科にて博士(医学)を取得.ミネソタ大学 神経科学部,ハノーファー音大 音楽生理学・音楽家医学研究所,上智大学 理工学部にて勤務した後,現職.主な受賞歴に,ドイツ研究振興会(DFG)Heisenberg Fellowship,Klein Vogelbach Prize,フンボルト財団Postdoctoral Fellowship,文部科学省 卓越研究員など.http://medlab.strikingly.com

第6回
5月 24日(水)
住岡 英信
株式会社国際電気通信基礎技術研究所 石黒浩特別研究所 グループリーダー
「人らしさのミニマルデザインとその応用」
今、私達の日常生活でも人型の対話ロボットが活動する場面を見るようになりました。それらのロボットは通常、できるだけ人間と同じ機能を持つように開発されます。しかし、人間の身体は様々な環境で生活するために冗長な機能を有しているため、ロボットが作業する環境によっては、不要な身体表現も存在します。そのため、ロボットが作業する環境において必要最低限の要素を探索することは、ロボットから伝わる情報をクリアにするだけでなく、ロボットの開発費・販売価格を抑えるとともに、作業環境で壊れにくいロボットの実現につながります。 本講義では、人型対話ロボットにおいて人らしさを表現するために、必要最低限の要素のみで設計するミニマルデザインのアプローチについて紹介します。これまで人類が人らしさをどのようにデザインしてきたかについて振り返りながら、実際に開発してきたロボットを紹介し、それらが私達が通常の対話よりも効果的な対話をもたらしたり、私達ではできない対話を提供するのに利用可能であることを示します。

略歴:2008年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。2008年より日本学術振興会特別研究員(DC2)、2009年よりスイス、チューリッヒ大学シニアアシスタントを経て、2012年よりATR石黒浩特別研究室の研究員。現在、ATR石黒浩特別研究所存在感メディア研究グループグループリーダ。人の存在感を持つミニマムロボットの研究開発、触覚に注目した人間とロボットの相互作用、対話ロボットによる高齢者支援,神経内分泌系に注目したロボットの評価に興味を持つ。

第7回
5月 31日(水)
中村 勇吾
THA. LTD. 代表 / ウェブデザイナー / インターフェースデザイナー / 映像ディレクター / 多摩美術大学美術学部統合デザイン学科 教授
「画面の中の質感(仮)」
オンスクリーンメディアにおける私のデザインの基本的な考え方を「質感」をキーワードにお話しできればと思っています。

略歴:ウェブデザイナー/インターフェースデザイナー/映像ディレクター。1970年奈良県生まれ。
東京大学大学院工学部卒業。多摩美術大学教授。1998年よりウェブデザイン、インターフェースデザインの分野に携わる。2004年にデザインスタジオ「tha ltd.」を設立。
以後、数多くのウェブサイトや映像のアートディレクション/デザイン/プログラミングの分野で横断/縦断的に活動を続けている。主な仕事に、ユニクロの一連のウェブディレクション、KDDIスマートフォン端末「INFOBAR」のUIデザイン、NHK教育番組「デザインあ」のディレクションなど。主な受賞に、カンヌ国際広告賞グランプリ、東京インタラクティブ・アド・アワードグランプリ、TDC賞グランプリ、毎日デザイン賞、芸術選奨文部科学大臣新人賞など。

第8回
6月 7日(水)
中嶋 浩平
東京大学大学院情報理工学系研究科 准教授
「タコ腕計算機:やわらかいマテリアルの情報処理能力について 」
Reservoir Computing (RC)は、リカレントニューラルネットワークの研究により発展してきた機械学習法・情報処理手法の一つである。この手法では、ネットワーク内部の結合を調節せずにリードアウトの結合のみを最適化するため、任意の大自由度力学系を情報処理に活用することが可能となる。この点に着目し、近年、物理系のダイナミクスを情報処理デバイスの一部として活用する手法である、Physical Reservoir Computing (PRC)の研究が盛んに行われている。この技術は、物理系自体のダイナミクスが計算資源として活用できるため、エネルギー効率の向上ならびに計算労力の削減が期待され、次世代ニューロモーフィックデバイス技術として注目を集めている。本発表では、特に、この技術がやわらかいマテリアルでできたロボット(ソフトロボット)と組み合わされるとき、極めて有効に、その物性特有の威力を発揮することを見ていく。特に、タコ腕計算機の実装例を通して、やわらかいマテリアルの多様なダイナミクスは、それ自体が計算機として活用でき、制御を埋め込むことができることを示す。また、より一般的な見地から、PRCの手法の可能性についても議論する。

略歴:2009年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。以降,チューリッヒ大学、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)にてポスドク、JSPS海外特別研究員を経て、2014-17年まで京都大学白眉センターにて特定助教。また、2015-19年までJSTさきがけ研究員(兼任)。2020年より,東京大学大学院情報理工学系研究科にて准教授。専門は非線形力学系、(物理)リザバー計算、身体性ロボティクス、ソフトロボティクスなど。

第9回
6月 14日(水)
花形 槙
アーティスト
「テクノロジカルに加速する資本主義社会において変容する肉体とその環世界」
花形がこれまでにメディアアートやパフォーマンスの領域で発表してきた実践「Paralogue」「Uber Existence」「still human」、また新作「A Garden of Prosthesis」について振り返りながら、人間とは何か、私とは何かということについて考える。

略歴:1995年東京都生まれ。テクノロジカルに加速する資本主義社会において変容する、自-他の境界、人間-非人間の境界への関心のもと、「私」でなくなっていく、「人間」でなくなっていく肉体についての実践を行う。主な実践に、人間そのものが商品化される架空の”存在代行”サービス《Uber Existence》、眼を異なる身体部位に移動させることで人間の身体規範を逸脱していく《still human》などがある。主な受賞に、第25回文化庁メディア芸術祭アート部門 新人賞、CAF賞2022 優秀賞など。

第10回
6月 21日(水)
岩田 洋夫
武蔵野大学 教授
「博士の異常な創作 ― アートになった超絶メカ」
超絶メカの図解に熱中した幼少期を出発点に、ハプティックスを立ち上げ、デバイスアートを提唱し、筑波大学にエンパワースタジオを作るまでの自分史について紹介する。

略歴:1986年 東京大学大学院工学系研究科修了(工学博士)、同年筑波大学構造工学系助手。2023年3月まで筑波大学システム情報系教授。現在、武蔵野大学教授。バーチャルリアリティ、特にハプティックインタフェース、ロコモーションインタフェース、没入ディスプレイの研究に従事。SIGGRAPHのEmerging Technologiesに1994年より14年間続けて入選。Prix Ars Electronica 1996と2001においてインタラクティブアート部門honorary mentions受賞。2001年 文化庁メディア芸術祭優秀賞受賞。2011年 文部科学大臣表彰 科学技術賞 受賞。2016~2019年、日本バーチャルリアリティ学会会長

第11回
6月 28日(水)
樋口 啓太
株式会社Preferred Networks リサーチャー / 醸燻酒類研究所 創業者
「Human-Computer Interaction研究者がクラフトビール醸造所を経営してみた」
HCI研究者としてキャリアを積んできた私は2019年にクラフトビール醸造所を運営する会社を起ち上げた。本公演では、クラフトビールを巡る状況やその醸造方法を簡単に解説しつつ、醸造工程に機械学習などの情報技術を活かそうとした試みについても紹介する。

略歴:博士(学際情報学),HCI研究者,クラフトビール醸造家.2015 年東京大学学際情報学府博士課程修了後,同大生産技術研究所にて特任助教および特任講師.2019年から(株)Preferred Networksにてリサーチャーおよび(株)醸燻酒類研究所取締役

第12回
7月 5日(水)
新竹 純
電気通信大学 情報理工学研究科 准教授
「可食ロボティクス」
食べられるロボット、あるいはロボットのような食べ物を創り出そうとする可食ロボティクスは、食品科学とロボット工学が交錯する面白い研究領域です。本講義では、これまで行ってきた可食ロボティクスの研究を、着想に至った経緯から紹介します。そして、将来的にどのようなロボットや料理ができて、どのように工学と食文化の発展に寄与できそうなのか、そうした可食ロボティクスのこれからについて議論します。

略歴:電気通信大学情報理工学研究科准教授。2009年電気通信大学知能機械工学科卒業、2011年電気通信大学知能機械工学専攻博士前期課程修了、2016年スイス連邦工科大学ローザン校マイクロシステム・マイクロエレクトロニクス専攻博士後期課程修了、博士(理学)。同大学博士研究員を経て2018年より電気通信大学情報理工学研究科助教、2023年より現職。

第13回
7月12日(水)
鳴海 拓志
東京大学大学院情報理工学系研究科 准教授
「コンテンツがあなたを作る」
体験が人の感覚や行動,そして心や思考を変えていく影響について,VRやARでの研究の実例を通じて議論する.

略歴:東京大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻准教授.博士(工学).バーチャルリアリティや拡張現実感の技術と認知科学・心理学の知見を融合し,限られた感覚刺激提示で多様な五感を感じさせるためのクロスモーダルインタフェース,五感に働きかけることで人間の行動や認知,能力を変化させる人間拡張技術等の研究に取り組む.