技術とコンテンツ / Technology and Contents

東京大学工学部 機械情報工学科

令和8年度(2026) 開講概要

映像, メディア, コンピュータ・グラフィックス,デザイン, 建築設計など, 理系文系を問わず技術とコンテンツの両方に何らかの関わりがある, さまざまな分野でご活躍の方々から , オムニバス形式でお話をうかがう.

講義は基本は遠隔開催とし,Zoomでおこなうが,講師の希望により対面でおこなう回がある.対面開催回については下記日程表に(対面)と明記してあるため確認されたい.講義に対する質問もZoomのチャットで受け付ける.参加用のZoomのアドレスはUTASを参照のこと.

X (Twitter)での公式ハッシュタグは#技術とコンテンツ(講師がSNS投稿にNGを出さない回については積極的な投稿を期待しています.)

評価方法

全12回の講義中, 7回以上出席した者を有資格者として, レポートで評価を行なう.レポートの締切,内容についてはオムニバス最終回にて告知する.

担当

日時・場所

日程・講師

# 日付 講師 講演題目・内容
第1回 4月 8日(水) 葛岡 英明
「技術とコンテンツ」
講義全体の概要,オンライン講義と出席登録の方法等,およびCSCWとコンテンツ研究について紹介する.
第2回 4月 15日(水) 中嶋 浩平
「タコ腕計算機:やわらかいマテリアルの情報処理能力について」
Reservoir Computing (RC)は、リカレントニューラルネットワークの研究により発展してきた機械学習法・情報処理手法の一つである。この手法では、ネットワーク内部の結合を調節せずにリードアウトの結合のみを最適化するため、任意の大自由度力学系を情報処理に活用することが可能となる。この点に着目し、近年、物理系のダイナミクスを情報処理デバイスの一部として活用する手法である Physical Reservoir Computing (PRC) の研究が盛んに行われている。本発表では特に、タコ腕計算機の実装例を通して、やわらかいマテリアルの多様なダイナミクスが計算機として活用でき、制御を埋め込むことができることを示す。
略歴:2009年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。チューリッヒ大学、ETH Zurichにてポスドク、JSPS海外特別研究員を経て、2014–17年まで京都大学白眉センターにて特定助教。2020年より東京大学大学院情報理工学系研究科にて准教授。専門は非線形力学系、(物理)リザバー計算、ソフトロボティクスなど。
第3回 4月 22日(水) 鈴木 啓介
「実在感への認知・計算論的アプローチ」
本講義では、私たちが「いま・ここ」の現実に存在しているという感覚、すなわち「実在感」が、どのような認知・計算メカニズムによって生成されているのかを探求する。まず、妄想や離人症といった精神疾患の分析から、情報のソースを判断する「リアリティ・モニタリング」の重要性を説き、ライブ映像と過去の映像を融合させる「代替現実システム」を用いた現実操作の可能性を提示する。次に、バーチャル・リアリティを用いた研究により、実在感が、単なる視覚的再現ではなく、身体運動と感覚入力の相関関係である「感覚運動随伴性」に深く根ざしていることを論じる。さらに、深層学習を用いた「計算論的現象学」のアプローチとして、深層学習モデルを用いた「幻覚機械」による変容意識状態の再現を紹介し、知覚的リアリティの構築プロセスを考察する。最終的に、没入体験技術や生成AIなどの最新技術が、身近でありながら捉えがたい性質をもつ実在感という主観体験を解明するための強力なツールとなる展望を示す。
略歴:2007年,東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。生命の自律性の計算機モデルの研究で学術博士号を取得後、理化学研究所脳科学総合研究センターにて仮想現実技術を使った認知神経科学研究に携わる。理化学研究所では現実にいる信念を操作可能な「代替現実」装置を開発した。2011年からは英国サセックス大学・意識科学研究センターにて仮想現実技術を用いた身体的自己意識についての研究を引き続き行う。現在は北海道大学人間知・脳・AI研究教育センターにて身体性・現実感・行為者性・変性意識などをテーマに研究に従事する。国際意識科学協会(ASSC)会員。専門は認知神経科学・意識科学・人工知能・人工生命。訳書に『現れる存在:脳と身体と世界の再統合』(共訳,第2章担当,NTT出版)、著書に『共感覚から見えるもの:アートと科学を彩る五感の世界 北村紗衣編』(共著,第1章担当,勉誠出版)。
第4回 5月 13日(水) 岸上 健人
MyDearest株式会社 代表取締役CEO
「Gorilla Tagシンドローム:VRゲーム市場とアメリカα世代」
TBD
略歴:TBD
第5回 5月 20日(水) 郡司 ペギオ
「物質と計算のハイブリッド:縁起と拡張された量子論」
計算機を物質で実装する時、通常、安定な物質を利用し、帰納関数で理解される計算過程を阻害しないように考える。物質の不安定性は計算にとって悪でしかない。そうだろうか。生物はその不安定な物質で実装された計算機であり、むしろ環境を利用して生きている。ここでは、物質と計算のハイブリッドな系を、環境に対してオープンな系として理論化する。第一の補助線は、仏教における縁起論である。計算過程はネットワーク化した帰納関数であり、ボトムアップだろうとトップダウンだろうと因果のネットワークである。縁起とは異なる因果の交わりであり、そこで生じる偶然の受容である。交点の意味が脱色され、外部が受容される。こうして物質の無際限さが計算に参与する。第二の補助線は量子論である。因果関係は原因と結果の関係を明確にする論理であるからブール代数で与えられる。これを貼り合わせると量子論理が構成される。その貼り合わせ部分(因果の交点)からノイズが注入されるシステムこそ、縁起を理論化した、物質と計算のハイブリッドモデルと考えることができる。講義では、簡単な導入を示したのち、システムの特徴を数理的に明らかにする。
略歴:1959年 茨城県水戸市生まれ,1982年 東北大学理学部地学科卒, 1987年 日本学術振興会特別研究員・東北大学大学院博士後期課程修了(理学博士)・神戸大学理学部地球科学科助手. 1999年 神戸大学理学部地球惑星科学科教授, 2014年〜現在 早稲田大学基幹理工学部表現工学科教授・神戸大学名誉教授.(主な著書)・原生計算または存在論的観測.東京大学出版会(2004). ・生命理論.哲学書房.東京(2006).・生きていることの科学.講談社現代新書(2006).・時間の正体:デジャブ・因果論・量子論.講談社メチエ(2008). ・生命壱号、おそろしく単純な生命のモデル.青土社(2010).・群れは意識を持つ.PHPサイエンスワールド新書(2013).・いきものとなまものの哲学.青土社(2014).・生命、微動だにせず.青土社(2018). ・中村恭子・郡司ペギオ幸夫(2018)TANKURI:創造性を撃つ.水声社.・天然知能.講談社メチエ(2019).・やってくる.医学書院(2020). ・浦上大輔, 郡司ペギオ幸夫(2021).セルオートマトンによる知能シミュレーション:天然知能を実装する. オーム社.・かつてそのゲームの世界に住んでいたという記憶はどこから来るのか.青土社(2022).・創造性はどこからやってくるか:天然表現の世界. ちくま新書(2023).
第6回 5月 27日(水) 小池 英樹
「AIとXRを用いた技能獲得支援」
熟練者の技能を効率良く学習することは、スポーツ、楽器演奏、ダンス、あるいは外科手術など様々な分野で重要です。従来は人間の教師が自身の経験に基づき教える非科学的な指導が主流でした。これに対し、近年のITテクノロジー、特にAIやXRの発展は目覚ましく、熟練者の動作を正確に数値化して、視聴触力覚を用いてフィードバックすることが可能となっています。本講義では、こうした最新技術を用いた技能獲得支援手法とその応用について紹介します。
略歴:1991年 東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修了。工学博士。電気通信大学助手、助教授、教授を経て、2014年より東京工業大学(現東京科学大学)教授。この間、UC Berkeley客員硏究員、内閣事務官など兼任。ヒューマン・コンピュータ・インタラクション、特に、大規模情報の視覚化、コンピュータビジョンのHCIへの応用、プロジェクタ・カメラ・システム、情報セキュリティとHCI、技能獲得支援のためのHCI等の研究に従事。
第7回 6月 10日(水) 上田 壮一
一般社団法人シンク・ジ・アース 理事/プロデューサー
「より良い社会のためのテクノロジーと創造性」
卒業旅行で訪れたアフリカで「時間」とは何かを考えるきっかけがありました。帰国して数日後、カナダの野生のシャチ(オルカ)研究者と出会い、テクノロジーの力を使って自然と人間の距離を適切なものにしようという彼の構想に強く共感しました。これらの経験が後に「地球時計」の開発に結びつきました。テクノロジーは社会・環境課題の原因にもなり、同時に解決にもなります。私たちの創造性をどの方向に働かせるかはとても重要です。2015年にSDGsが採択され、日本の文部科学省は科学技術イノベーションの力を使ってSDGs達成に貢献する活動を推奨する「STI for SDGs」という政策を掲げました。縁があってその政策を後押しするアワードの選考委員を務めることになり、多くの優れた活動と出会いました。講義では私が取り組んできたプロジェクトの紹介に加えて、テクノロジーが社会課題・環境課題の改善に創造的に使われている事例も紹介したいと思います。この講義がテクノロジーと社会と人の創造性の関係について考えるきっかけになれば嬉しいです。
略歴:東京大学大学院工学系研究科(機械工学専攻)修了。広告代理店に勤務後フリーランスを経て、2001年にThink the Earth設立。地球時計wn-1、携帯アプリlive earth、プラネタリウム映像「いきものがたり」などコミュニケーションと教育を通じて環境や社会について考え、行動を促すプロジェクトを作り続けている。編著書に『百年の愚行』『1秒の世界』『気候変動+2℃』『未来を変える目標 SDGsアイデアブック』『あおいほしのあおいうみ』など多数。グッドデザイン賞審査委員(2015-2017)、STI for SDGsアワード(科学技術振興機構)選考委員長、国立環境研究所 社会対話・協働推進オフィスアドバイザー、新渡戸文化学園フューチャーアドバイザー、対馬市SDGsアドバイザリーボード委員など歴任。元多摩美術大学情報デザイン学科客員教授。
第8回 6月 17日(水) 春名 太一
「「起こることが起こる」という二重性から考える複雑系の数理モデル」
「起こることが起こる」とはどのようなことなのか、について関心があります。「起こることが起こる」とは、起こりうることの一つが現に起こることになるということであると同時に、現に起こることが起こりうることの一つになることでもあります。講演者は、一つの試みとして、系の圏論的表現をある意味で宙吊りにするという方法によりこの二重性を定式化してきました。本講演では、この方法に基づいて考案した、べき乗則の起源、臨界状態への自己組織化、自己触媒サイクルの出現、を論じるための複雑系の数理モデルについて紹介します。用いられる圏論の概念については、その意味を中心にできるだけ直感的に説明します。
略歴:2008年神戸大学大学院自然科学研究科博士後期課程修了.博士(理学).2008年,日本学術振興会特別研究員(PD),神戸大学大学院理学研究科助教.2008–12年,科学技術振興機構さきがけ研究員(兼任).2017年,東京女子大学現代教養学部准教授.2024年より同教授.専門は複雑系科学.
第9回 6月 24日(水) 岡村 和佳菜
STORY inc. 取締役/プロデューサー
「エンタメの設計——プロデューサーは何をしているのか」
TBD
略歴:主にアニメーションのプロデューサー。東宝株式会社にてTOHO animationの立ち上げから参画し、『ハイキュー!!』『血界戦線』『僕のヒーローアカデミア』等のアニメシリーズ・映画の企画プロデュースに従事。現在はSTORY inc.に所属し、新海誠監督『天気の子』『すずめの戸締まり』、山田尚子監督『きみの色』等を手がける。
第10回 7月 1日(水) 木村 篤信
一般社団法人 日本リビングラボネットワーク 代表理事/東京都市大学 准教授/地域創生Coデザイン研究所(NTTグループ)地域創生アドバイザー
「社会はデザインできるのか?—技術とコンテンツのその先へ」
技術やコンテンツは、人々の体験や社会のあり方を大きく変えてしまう力を持っています。しかしその変化は、必ずしも設計されたものではなく、「意図せず生まれてしまう」ことも少なくありません。そのような中でも、より良い社会をつくるために、私たちはどのように社会に関わり、問いを持つとよいのでしょうか?本講演では、ウェルビーイングやサステナビリティといった価値が求められる現代において、「社会をデザインする」とは何を意味するのかを問い直します。リビングラボなどの実践事例を手がかりに、産官学民の共創の現場で起きている試行錯誤や葛藤を共有しながら、技術やコンテンツに関わる人が持つべき視点と、より本質的な課題設定のあり方について考えます。
略歴:博士(工学)。企業の行動原理に基づく研究・事業開発の限界を感じ、自分たちの暮らし(地域・都市)に開かれたリビングラボ・ソーシャルデザインの研究&実践プロジェクトを立ち上げる。国内外での共同研究や大牟田リビングラボをはじめとする多数の実践知を踏まえ、現在は、日本各地の市民協働PJ、企業のオープンイノベーションPJ、行政のウェルビーイング政策デザインに取り組んでいる。主な書籍に、『2030年の情報通信技術生活者の未来像』『はじめてのリビングラボ─「共創」を生みだす場のつくりかた』など。
第11回 7月 8日(水) 川瀬 佑司
「生成AIは創作の敵か相棒か? 作編曲家・ITエンジニアの視点から探る表現の未来」
作編曲の仕事や制作環境を手がかりに、音楽制作の現場でテクノロジーが果たしてきた役割を振り返る。そのうえで、生成AIが創作や音楽業界にもたらす変化を見据えながら、「AI時代に人間らしさはどこに宿るのか」「これからの表現者に何が求められるのか」を考える。
略歴:2014年に東京大学工学部電気電子工学科を卒業、2016年に東京大学大学院学際情報学府を修了。会社員を経て、2018年よりフリーランスとしてITエンジニア業と並行しながら、J-POPを中心に作編曲家として活動。ベースをはじめとした複数楽器の演奏経験を活かし、幅広いアーティスト・作品への楽曲提供を行っている。代表作に、水樹奈々「Nightfall」、フィロソフィーのダンス「Makeup Magic」、ポケるんTV「ウェルカム!ポケるんワールド」など。
第12回 7月 15日(水) 鳴海 拓志
「コンテンツがあなたを作る」
体験が人の感覚や行動,そして心や思考を変えていく影響について,VRやARでの研究の実例を通じて議論する.
略歴:東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻教授.博士(工学).バーチャルリアリティや拡張現実感の技術と認知科学・心理学の知見を融合し,限られた感覚刺激提示で多様な五感を感じさせるためのクロスモーダルインタフェース,五感に働きかけることで人間の行動や認知,能力を変化させる人間拡張技術等の研究に取り組む.