Project:
Visualization for Genome Data
using Virtual Reality Technology

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VR技術を利用したゲノム情報の可視化

研究概要

ゲノムサイエンス分野において,遺伝子発現量情報に代表される膨大な実験情報が取得できるようになった.その情報を情報科学などを利用することで効率よく解析し,有用な知識発見,薬の開発,病気の治療に役に立てる試みがなされるようになった.このようなことを研究する「情報生物学」「Bioinformatics」といった名前で呼ばれる分野が現在,立ち上がりつつある.
その中で遺伝子機能解析において,大量の実験データを直観的に研究者に理解させるための可視化システムの開発が注目されるようになった.当研究室ではシステム生物医学ラボラトリー分子生物医学およびゲノムサイエンス分野の研究室と共同で,バーチャルリアリティ技術を応用したゲノム情報の可視化手法の研究を行なっている.中でも,没入型多面ディスプレイと呼ばれる全天周型ディスプレイを利用した可視化は,大量の情報を一度に提示可能なため,極めて有効なツールになると考えられる.

研究現況

マイクロアレイの技術を用いることで,遺伝子発現量を数値として計測することができる.当研究室では、Affymetrix社のGeneChipで測定されたデータを用いて,データの解析及び可視化システムの開発と評価を行っている.その中で,没入型多面ディスプレイ内を利用した統合的解析作業環境VEGAS (Virtual Environment for Genome Analysis and Simulation ) を開発している.

vegas

VEGAS (Virtual Environment for Genome Analysis and Simulation) は現在,没入型多面ディスプレイ(IPT)を利用した遺伝子発現量解析に特化して開発されている.没入型多面ディスプレイとしては東京大学にあるCABINを利用し,CABINライブラリを利用してシステム開発を行っている.現在,VEGASを遺伝子発現量情報だけでなく,生物学的な様々な情報提示,シミュレーション,可視化,展示などに応用していきたいと考えている.
写真は,没入型多面ディスプレイCABIN,そして統合環境VEGASを利用した遺伝子選択の多面の解析作業空間,没入型多面ディスプレイ内で細胞のCGを表示した例,開発しているExpression Imbalance Map (EIM)である.EIMは,遺伝子の発現量情報と染色体上の遺伝子の位置(Locus)情報を統合して,確率的に染色体近傍での発現異常を可視化する手法である.

没入型多面ディスプレイCABIN

VEGASを利用した遺伝子選択の作業空間

没入型多面ディスプレイ内での細胞のCG

Expression Imbalance Map

 

参考文献

  • Kunihiro Nishimura, Koji Abe, Shumpei Ishikawa, Shuichi Tsutsumi, Hiroyuki Aburatani, Koichi Hirota, and Michitaka Hirose, "Virtual Environment Design Guidelines for Gene Expression Analysis: The Utility of a Lab Bench Metaphor and a Road Metaphor", IEEE Virtual Reality Conference 2004, pp.247-248, Chicago, USA, 2004.3.

  • Makoto Kano, Kunihiro Nishimura, Shuichi Tsutsumi, Hiroyuki Aburatani, Koichi Hirota and Michitaka Hirose, "Cluster Overlap Distribution Map: Visualization for Gene Expression Analysis Using Immersive Projection Technology", Presence: Teleoperators and Virtual Environments, Vol.12, Issue.1, pp.96-109, 2003.

  • Makoto Kano, Kunihiro Nishimura, Shumpei Ishikawa, Shuichi Tsutsumi, Koichi Hirota, Michitaka Hirose and Hiroyuki Aburatani, "Expression Imbalance Map: A New Visualization Method for Detection of mRNA Expression Imbalance Regions", Physiol. Genomics, Vol.13, pp.31-46, 2003.

没入型多面ディスプレイ : CABIN

CABIN (Computer Augmented Booth for Image Navigation) は,5面スクリーンをもった没入型多面ディスプレイである.特徴としては,床面に強化ガラスを利用することで5面スクリーンを実現したこと,CGと実世界両方を用いたVR世界を構築することができること,などがあげられる.5面にすることで,最大273度の視野を得ることができ,VR空間に入り込んだ感覚,臨場感を得ることが可能となる.CABINは東京大学本郷キャンパスにあるIML(インテリジェント・モデリング・ラボラトリ)に設置されている.

参考文献

  • 廣瀬・小木・石綿・山田,「多面型全天周ディスプレイ(CABIN)の開発とその評価」,電子情報通信学会論文誌,D-II Vol.J 81-D-II, No.5, pp.888-896,1998

CABINのアプリケーション

CABINのアプリケーションとしては,相対性理論の世界の可視化,分子の振動する様子,流体力学,CGの都市,CGの車などがある.その他,ゲノム情報の可視化,ネットワークの可視化,ソフトウェアの可視化などの研究が成されている.また,IBR (Image Based Rendering)などを利用してより実世界に近いVR世界を作る研究がなされ,地球や丸の内などのアプリケーションがある.地球の場合,宇宙から丸の内までシームレスに降りていくことができるアプリケーションである.その他,ビデオアバタの研究やHapticGEARを利用した触覚の研究,3次元立体音響の研究などがなされてきている.

Last Updated on May. 4th, 2004.