私たちのリアリティは、身のまわりの空間や場所とともに立ち上がります。同じ話を聞いても、どこで聞いたかによって印象や思い出しやすさが変わります。学んだときと同じ場所や状況にいると、その内容を思い出しやすくなることが知られており、これを文脈依存記憶と呼びます。懐かしい場所を訪れると昔の出来事がよみがえるように、記憶や理解は場所と結びついています。また、自分がどちらに歩いているか、どれだけ移動したかといった感覚も、目に見える景色に大きく左右されます。
バーチャルリアリティや拡張現実感の技術を使うと、人が身を置く空間や場所そのものを作り変えることができます。たとえば、目に見える景色を少しずつ回転させると、人はまっすぐ歩いているつもりで実際には円を描くように歩きます。この性質を利用すると、限られた広さの部屋の中で、それよりずっと広い仮想空間を歩きまわる体験をつくれます(リダイレクテッドウォーキング)。また、失われた建物や当時の街並みを再現したり、展示物を実際に置かれていた場面のなかで見せたりすることで、歴史や文化を場所とともに体験することもできます。
私たちは、空間や場所との関わりのなかで知覚・記憶・移動の体験がどのような仕組みで生まれるのかを明らかにする研究と、その仕組みを工学的に応用し、リダイレクテッドウォーキングや、歴史的・文化的な空間の価値を伝えるデジタルミュージアムやAR展示をデザインする研究に取り組んでいます。
























































